
オーディオ・ビジュアル・インスタレーション
禅宗寺院において、龍は守護神であり、僧に仏法の雨を降らせる存在とされています。本作では、非線形物理システム、デジタル映像技術、そして脳科学に基づくサウンドを駆使することで、現代ならではの「仏法の雨を降らせる龍」を描くことに挑戦します。建長寺の法堂の天井に描かれた小泉淳作の『雲龍図』と対をなす形で本作『龍雨図』は設置されます。 もう一つのチャレンジは、日本画における「写」の現代的なあり方の模索であり、「かさね」「うつし」「なぞらえ」といった日本古来の美意識の2020年代ならではの継承の型を提出することです。小泉淳作の『雲龍図』を脇田玲なりに描くとはどういうことか。それを突き詰めた結果、単に小泉の絵のデジタルスキャンに加工を施すということではなく、龍を見るという行為の背後にある現象や原理、その場が発する気配といったもの、それ自体を描くことだと考えました。また、小泉の技法へのオマージュとして、法堂の漆黒の床に白い粒子を投影し、何層も何層も白い粒子を塗り重ね、単純な白ではなく、単純な粒でもない、深みと広がりをもった色と形と動きをつくることを目指しました。 最後に。非線形の力学系が龍を創発するという現象はとても興味深く、ここに科学、芸術、宗教の横断的な対話を見ることができるかもしれません。シンプルなシステムが生み出す「無から有、有から無」への転換は、全てが一つであり一つが全てであるという禅の世界と共振します。 ※本イベントの一部の展示では、点滅する光が表示されます。光線過敏症、発作、意識喪失、またはてんかんの発症を経験している方は、事前に医師等にご相談の上でご参加ください。

脇田 玲
目の前にありながらも知覚できない力を可視化/可聴化/物質化することで世界の見方を更新する作品をつくっている。主な展示に「Over Billions of Years」(モエレ沼公園 / 札幌国際芸術祭, 2024)、「アランとキースのために」(中村キース・ヘリング美術館 / Hokuto Art Program, 2022)、「脇田玲 - Photons」(清春芸術村 光の美術館, 2018)、音楽家 小室哲哉との8K映像音響インスタレーション (Ars Electronica Festival, 2016) およびライブ・パフォーマンス (MUTEK / RedBull Music Festival, 2017)、日産LEAFと一体化した映像作品「NEW SYNERGETICS - NISSAN LEAF X AKIRA WAKITA」(NISSAN CROSSING, 2017) などがある。慶應義塾大学環境情報学部教授。博士 (政策・メディア)。 ウェブサイト